続・田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
なのではないか。読者はこのような矛盾に直面し、判断停止・宙吊り(エポケー)の状態に置かれます。この矛盾こそが垂直性なのです。読者は、言葉を使うからこそ、その言葉で覆えないものが見えてくるのだ、そして言葉で覆えないものはただ感覚され発見されるにすぎないのだ、例えばそういう解釈に導かれます。矛盾、つまり垂直性を詩の中に提示することによって、読者の水平的な読詩の流れを遮断し、読者に解釈や反省を強いる。
さらに、詩の異化作用。「異化」とは、日常的なものを日常的ならざるあり方で再提示することです。異化こそが文学の本質だと論じていた学派(ロシア・フォルマリズム)もありました。異化とは暴力の行使でもあります
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