続・田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
 
を安らかにします。現実的な手がかりというものを語ろうとするとき、どうしても必要なのが、現実に存在する人や土地の名前、つまり固有名であり、実際に生きるときに用いる様々な道具の名前、つまり生活語であるわけです。でも、中期以降、田村が現実へと向かってもなお失われなかったモチーフがありました。それが「恐怖」のモチーフです。少し田村の「恐怖」についての考えを聴いてみましょう。同じく「恐怖・不安・ユーモア」より。

 自分には確かに恐怖というものが一貫して大きな動機になっています。いわゆる現代的な詩人の詩というのは、恐怖よりむしろ不安、不安というものが大きなモチーフになっているわけですよ。その原動力になる
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