続・田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
なるものはというと、欲望なんです。欲望がなかったら不安とか不平不満とかいうものは生れないですからね。
そして、欲望を軸にすると状況に依存した相対的な怒りしか生じない。だが、状況に依存しない絶対的な怒りも必要なのではないか。不安を軸にすると敵が見える。だが、そのようにして敵を存在させるのではなく、「人間の存在そのものに対する本質的な恐怖」が必要だ。不安と恐怖が交わったところで詩がかければ立派な詩が生れる。そんなことも言っています。
ここに見てとれるのも田村の水平性と垂直性の交わりです。欲望を抱くことは、状況に対抗することであり、垂直的なことです。ですが、田村は欲望を抱くなと言う。これは状
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