朝の珈琲 /服部 剛
 
いつになくぱっちり目覚め 
むくりと起きた僕は 
妻にお風呂セットの袋を渡され 
車のキーを廻し、アクセルを踏む。 

青信号の交差点で、すれ違う護送車。 
(青年達の母親は、今頃どうしているだろう?) 

何年も前に、スクーターで転んだ 
おじさんが顔を歪めていた、曲がり角。 
(あれから怪我は、治ったろうか?) 

赤信号になり、ブレーキを踏む。 
前の車は「福島ナンバー」のスポーツカー。 
(彼の両親は地震の時、無事だったろうか?) 

そんな朝の気紛れなドライブの 
フロントガラス越しに 
語りかけてくるいくつもの情景達に 
思いを馳せて 

人も
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