匿名遊戯/雑魚ヒロシ
 
打ち捨てられた赤茶色の魚取り網にはらりと白露の涙を零した


その美しさゆえに馬賊の王によって選ばれまるで意思も無く乾燥花の運命を手にした少女の黄金を箔された髑髏杯が浮かぶは影舞い踊る凪いだ夜の海面


冷然と皎々と冴え渡る夜半(よわ)の虚空に優婉と繊細とを共に湛えた望月の端厳赫奕とした姿態を受け光囁く万象は段々と悉く其の輪郭を失いゆき瞬く時に覚える悲哀にも似た感動と翻りて我が現身のすがた色濃く慄然と覚える嘆きのごとき其の所在無さ








わたしとあなたは互いに手を取り合い砂浜をゆっくりと一歩一歩踏みしめるように歩いていた嗚呼ゆっくりと踏みしめるその一歩一
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