匿名遊戯/雑魚ヒロシ
歩一歩がまるでわたくしの心に風に撫でられたみなもの波紋のごとく現れては消える不安をかたちに表しているようで思わずわたしはあなたのちいさな手を少しだけ握り締めたあなたはわたくしのその想いを知ってか知らずかわたしの顔をちらと見てほほえみを投げかけそうしてやわらかにわたしの手を握り返した一歩一歩ゆっくりと踏みしめるその砂浜についた足跡を振り返ることは出来ず只重ねた手の平にしっとりと感じる互いの汗の温もりがあえかなふたつの心の唯だひとつの融化の表象であるような気がしてわたしはあなたのちいさな手を宝物を手にした子供のようにまた少し力を込めて握り締めた
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