樹海の夜/ホロウ・シカエルボク
 



空耳か
外を行く誰かの声か
妙に近い場所で
聞こえてくる誰かの声
聞き取れず
無視できない
例えるなら
かすり傷の
痛みのような
その声…


午前三時
摩耗した
睡眠への欲求が
霧のような視界を産む
霧のような視界のなかで
おれはまぼろしの…
まぼろしの領海を
見ていた
見ていた


夏は気が早く
風は温度を変え
夜明けへの準備を
整える
散らかった机の上
読みかけの本から
栞代わりに挟んだ
CDの帯の角
パソコンの稼働音が
人生を意識化する
唯一の手段

[次のページ]
戻る   Point(4)