愛はあるから/田園
 

少年は確実に大きく怒っていた。

ぼく、

もう一度言いかけてやめた。

僕では駄目なんだ。
この子には僕ではない誰かが必要なんだ。
そう思って去ろうとした。

ら、
少年は僕のシャツをむんずと捕まえていた。

困り果てた僕は、しゃがんで、

どうしたんだい?

と尋ねた。


少年は語らなかった。
何にも、泣きもせず、相変わらず怒りに身を任せて。

突然、彼女の後姿を思い出した。
彼女には必要なかった僕。

その僕に何か、すがっているのか怒っているのかわからない少年一人。

僕が必要なんだろうか。

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