松島やと猫語とパクリとボルヘスと/佐々宝砂
 
ただけだったり)。1970年代にははっきりとした猫語使いが二人登場する。一人は柳瀬尚紀。この人は半猫人を自称する猫語使いであり、あの『フィネガンズ・ウェイク』を翻訳した人なのだから猫語翻訳などたやすくこなすに違いあるまい。世紀が変わってもなお半猫人ぶりは健在で、朝日新聞に「猫舌三昧」というタイトルからして猫っぽいエッセイを連載していた。もう一人は谷山浩子。1976年に三回目のデビューを果たした谷山浩子は、猫森に出入りしている猫語使いであり、人間よりも猫に近い。その筋の情報によれば、彼女は21世紀に入ってもまだ猫の集会を開いているらしい。

この二人のパイオニアの力によって(この二人の力のためだ
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