松島やと猫語とパクリとボルヘスと/佐々宝砂
た「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」という小説を御存じだろうか? 非常にとんでもない小説である。つーか小説なのかどうかすら私にはよくわからない。まあ短編集の中に入ってるのだから小説だろうということにしておいて、この小説における『ドン・キホーテ』とは、セルバンテスの書いた有名な『ドン・キホーテ』ではない。ピエール・メナールなる20世紀の作家がセルバンテスになりきることで、元の『ドン・キホーテ』と一字一句同じ作品を作ろうとした、という設定の元で書かれた(しかし書き終わらなかった)小説のことなのである。ボルヘスのこの作品は、その、一字一句異ならないはずの2つの作品、ピエール・メナール版『ド
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