松島やと猫語とパクリとボルヘスと/佐々宝砂
。わらべ歌や諺、あるいは梁塵秘抄や閑吟集に採取された作者不明の当時の流行歌のようなものだ。日本語を使う人々の共有財産だと言ってもよい。ささやかで、かなりバカな財産ではあるけれど。
この句は、単に有名なだけであって、いい句でない、というか、いい句かもしれないが俳句でない。季語が入ってないし、切れ(この場合「や」)が三つもある。なんてことをいちいち指摘するのもアホらしい。句には間違いないが、大バカ句なのである。何を言いたい句なのかさっぱりわからないが、覚えやすい。覚えやすくて意味がないゆえに、誰でも使える。やたら使える。「松島」を他のものに置き換えれば、何にでも使える。元句の「さて」は、妙に文語
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