田村隆一詩集 現代詩文庫を読む/葉leaf
 
ものを殺さなければならない、という規範を示しています。他方で「一羽の小鳥のふるえる舌がほしいばかりに、/四千の夜と四千の日の逆光線を/われわれは射殺した」と語り、詩を書く欲望のために愛するものを殺した、その詩人の罪を非難しています。「小鳥のふるえる舌がほしい」とは、結局詩を書きたいということの喩えでしょう。これを見ると、田村は倫理的態度においても分裂し、ジレンマに直面していたことが分かります。詩を書くためには殺せ、と能動的に命令する一方、詩を書くためにはしぶしぶ殺さなければならないのだ、と受動的に世界に屈服しています。そして、殺すことは結局詩を書く欲望に駆られてのことであり、それは罪なのだ、と能動
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