世界との闘争ーーー詩についてーーー/yamadahifumi
 
の周りにある詩の殆どには、詩人の個性は見られない。それは個性以前の段階で留まってしまうのである。良い詩人の詩は、いや、良い表現者の表現というのは、それが良い作品であろうと悪い作品であろうと、その作者の血肉が染み込んでいる、魂の分離がなされて、その詩にももう一人の分裂した作者が棲んでいるという点にある。
 僕は上記の詩人はいずれも好きなのだが、一番好きなのはやはり田村隆一である。田村隆一には強い倫理性と共に、文学の正統性とでもいうべきものがある。そこには善と悪の問題があり、悪を強く憎む、という人として当然の価値観が存在する。だが、今、何が悪か?と問う事は難しい。
 それに比べると、谷川俊太郎とい
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