光闇論/aria28thmoon
出逢えぬままに
既に 逞しい体躯と
ハイ・バリトンの声を得ていた
そして、ふと つぶやく
「何故、未だこうして 生きていられるのだろう
俺はもはや 少年ではないーー」
刹那、彼の肉体は朽ち
虚しくも 灰のみが 其処にのこった
薄い笑みを浮かべ
灰のもとへと現れし少女
蒼くつめたく揺れる銀髪
陶磁のように白い肌
月のむすめである
彼女は灰を貪った
細かな粒子のひとつも残さず
齢十ほどに見えた少女は
みるみるうちに麗しき美女に
そして 彼女はその腹に
新たな生命を 身籠った
彼女はやがて むすめを産んだ
かつての彼女によく似たむすめに
ひとつ
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