光闇論/aria28thmoon
とつ、やさしく口づけをして
それから彼女は母のもとへ
闇の世界を統べる者
月の女神のもとへ
「お母さま」
言うなり母の透き通る頬に
ひやりと冷たい指をあてがう
「もう、あなたは年老いた身
どうぞ ゆっくり おやすみなさい
大丈夫、わたくしも
もう 母となりましたから」
かつての女神の面影もなく
老婆の姿となった母は
彼女の力を奪い去り
女神となりし自分のむすめを
憎々しげに 見つめていた
老婆は死の間際
わずかに残された力を振り絞り
光輝く玉へと その姿を変えた
「おまえ、どうか お願いだ
憎き我がむすめと孫とを
光の藻屑としてお
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