喀血するリリックの落ち窪んだベイビー/ホロウ・シカエルボク
 
と思わなければよかったのかもしれない、だが俺は聞いてしまった、その音があることを知っていた、だから耳をすましていた、ずっと、ずっと…痴呆症の老人のように口を半分開けて―その音には、決まった音色はなかった、少し高い時もあったし、少し低い時もあった、耳をつんざくような時もあったし、気のせいだと思えば思えるくらいの時もあった、脳幹に…そいつは隠れているのかもしれない―べとついた肌が寝床を拒絶する、昼間の間外気の影響をもろに受けるクローゼットに無理矢理閉じ込められているそいつらは、雨の日にはうんざりするくらいの雨の顔をして俺の身体を受け止める、どうにもならないことは必ずあるものよ、そんな訳知り顔をして―こ
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