風と蕩ける/岸かの子
どれくらい恋を忘れていたのさえ
思い出せなくなって
公園へ続くこの坂を上りきったら
思い出せるような気持ちになった
自転車置いて靴ひもをギュッと締めなおす
カバンを抱え一気に駆けた
向かい風ひゅるり追い風さらり
あと少しあと少し少し
向かい風が気を引き締めてくれる追い風はゼロ
滑り台のとっぺんが見えてくるくる
初恋は実らないあの人元気かな笑ってるかな
雲のように掴めない人だったなな
息を切らして駆け上がる公園に小さい子が何人も
何人も遊んでいる遊んで
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