風と蕩ける/岸かの子
 

ごめんね滑り台のとっぺんに上がらせてね上がらせて
        そこから見える街の風景は蒼くて蒼くて

向かい風が追い風に変わった瞬間だ流れた汗に
        口紅が溶けていく口紅だけが
蒼い街は私を拒んだりしていなかったほんの少し少し
        もう一回だけこの街で恋をしよう恋を
あの時言えなかったさようならを溶けていく口紅を唇から
        すっぴんの唇からあなたへあなたへ

坂の上の公園の滑り台のとっぺんから大好きだったあなたへ

                       あなたへ
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