6月の風/yo-yo
互いの曲想は似たものになり、やがてひとつの曲になっていくのが楽しかった。
その頃のぼくは、特定の女の子を好きになることがあった。
ときどき頭の芯や胸の奥が熱くなって、とりとめもなく膨らんでくるものを、吐き出したり吸い込んだりする。それは忙しげな呼吸のようなものだった。
音にも言葉にもならない、自分でも捉えがたい想いの動きだった。そんな曖昧な心の衝動を表すことや、それを相手に伝えることなど、ぼくにはまだできなかった。
なにかが、ぼくの体の中を渦巻き吹き抜けていく。それは甘い薫りをはこんでくる、初夏の風みたいなものだったかもしれない。
ハーモニカは、吐く息と吸う息の呼吸が音になる楽器
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