6月の風/yo-yo
楽器だ。
呼吸は、まだ言葉にならない胸の中の想いのようなものだった。ハーモニカに息の風を吹き込んでいると、いつしかもっと大きな風につつまれている。呼吸と風が一体になって、みえない想いが音になって広がっていくのだった。
そのとき体の中を、快い風が吹き抜けていく。その風がどこから吹いてくるのかわからなかったけれど、風もまた呼吸をしているようだった。どこかで甘い果実を齧ってきた、風の息だった。
いくつものため息のあとに、大きく息を吸う。
この6月の朝の、風がふたたび果実のように甘くなった。
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