6月の風/yo-yo
 
がぼくよりずっと優れた人間にみえた。彼に見えるものを、ぼくも見えるようになりたかった。

観測のあとはフィルターを外して、望遠鏡で遠くの山の木々を覗いたりした。枝から枝へレンズを動かしていく。すばやく流れていく鏡像を追っていると、体が宙に浮いて鳥になったみたいだった。
ときには目印になる木を見つけて、その木のところまで登っていく。そこは見晴らしの良い場所だった。ぼくのポケットにはハーモニカがあった。ハーモニカは1本しかなかったので、交代で吹く。
知っている曲がなくなると、でたらめな曲を吹いたりする。
彼の曲はテンポとリズムがきちんとしていた。ぼくはメロディだけを気分で吹いた。そのうち互い
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