タケイ・リエ小論/葉leaf
まっぴるまから貝になる
貝は気が向いたときだけ舌を出すでしょう
(誘う水は体液に似ているし)
「岸」
さて、この引用部を見てみよう。この部分には、確立した思考や意志というものが希薄である。詩の主体は「うっかり」人を産んでいるわけであり、人を産むことについての深い思慮や強い意志は感じられない。「貝」は「気が向いたときだけ」行動する。「貝」の行動は気まぐれであり、連続する決意のようなものは見当たらない。ところで、近代以降、自我をまとめ上げるものとして挙げられてきたものは、思惟や自意識や意志であった。ところが、タケイの詩には、思惟や自意識や意志の働きがあまり感じられない。思惟
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