ミナモ/mugi
にばらまいた、ひどく疲れてい
るようにみえたし、もしかすると、泣いているのかもしれなかった、彼のほそい幹にそっとふれて、さ
よならの挨拶をする、翌朝、目がさめると、小豆のような雨が、窓ガラスを叩いていた、この町の上空
を台風が通過しているのだと、ラジオのパーソナリティはとても早口でそういった、
◆11
そして、ここから先にはなにもない、運転手はレバーを引いてバスの扉をあけた、わたしが様子をみて
くるので、みなさんは席を離れないでくださいといった、それから、彼のすがたは徐々に小さくなり、
ある地点で、すっ、と消しゴムで句点を擦るようにして消えた、車内では小学生た
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