ミナモ/mugi
 
生たちがランドセルか
ら、アンモナイトや三葉虫の化石をとりだして、なぁ、この石を薄荷の飴にするには、人類はあと何回
の戦争を必要とするかな、と、ひとりの子がそういった、窓の外側はまだ線をひいていないノートのよ
うにまっしろで、雨音がひびいていた、このガラスのむこう側には、色や形や匂いや、感情や歴史や生
活の一切がない、だから当然雨も降ってはいない、この雨音はきっと乗客のうちのだれかの、極めて個
人的な記憶にむすびついている、おそらくそれは、普段は本人には意識することのできない領域にしま
われていて、けして言葉にはならない類いのものだ、ふいに誰かがピンポンと降車ボタンを押すのだ
が、ボ
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