饒舌する不在(それが伝言板ならどんな言葉も読み取れることはない)/ホロウ・シカエルボク
専業主婦
年寄りばかりが暮らすトタン壁のアパートメントから大音量のテレビショー
太平洋のどこかで暴れている台風のせいでソフトキャンディのような暑さ
甘えさせてもらえなくてゲージで拗ねてる甘えん坊の雄猫
出来の悪い漬物を思わせる近所のカラオケ喫茶から聞こえる歌声
入口の壊れた地下室のバスルームの容赦ない湿気
東の方から送られてきた小さな荷物をひとつだけ下げた配送の男
打ちっぱなしのビルの廊下でけたたましい鳴声を上げる誰かの小型犬
この世の終わりのような西日がカーテンのカラーを吸い取る
アコースティック・ギターのカッティングはシンプルなエイトビート
一行ずつ書いては本に目を戻すあま
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