萩尾望都私論その6 私の赤い星2「母への憧憬」/佐々宝砂
 
自身は、「わたしはわたしがわたしでいられる国へ行ってやる かならず!」と心に叫ぶ。だが彼女はまだ知らない。「わたしがわたしでいられる」とはどんなことなのかを。彼女が憧憬してやまない母なる赤い星が、いったいどんな星なのかを。

そこでエルグが登場する。超能力を持つらしい謎の男エルグが「きみの目は赤い ぼくの目も赤い ぼくたちは同族だ 星(セイ)」と言ったとき、セイの感情がどれほど揺れ動いたか、想像してほしい。エルグにしがみついたセイは「さびしかった!」と叫ぶ。セイの言葉にも感情にも嘘はない。「ぼくたちは同族だ」というエルグの言葉にも嘘はない。だがエルグは火星人ではない。ではエルグとは何者か
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