『夜のレモン』/川村 透
鼓笛隊が、追いかけてくる、ブリキの、葉巻をくゆらせ、
大麻の香りのする少年たち、老婆のように白髪になって。
夜のレモン。
土砂に埋もれたやわらかい指、果肉
生きている子は、いないか?レモンは無念の、果実
口の中の、茶色い奴らが始める、21世紀の土木工事
夜のレモン。
傷口から生まれる宝石、娘よ
僕は、虎の猛々しさで、
骨のような音を立てて、レモンを齧って、みせる。
君は絵本を閉じて、堤防の向こうへ、落ちてゆく。
君は目に見えない階段をわざと、踏み外してみせたんだ。
冬に、なりました
これで終わりです
確かに終わりました
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