AM1:16/はるな
 
いたから乾かした。
ずるいとかずるくないとかはどうでもいいと思う。そんなの大事じゃない。どうしてもずるくなれないなら愚鈍であればいい。それが性質というものではないか。ずるいのがずるいならずるくなればいいのに。どんどんずるくなって、欲しいものを手に入れればいいのに。ずるいな、と後ろ指をさされながら。ずるくも、愚鈍でもない女なんて意味がわからない。自分の体もつかえないくせに、自分のことを女だと思う不思議。たぶん、体中の血管に、ぬるい砂糖水が流れている。

階段ですれ違った男の人が黒いスニーカーを履いていて、それがちょっと濡れていたから泣いた。

だって、思い出すものは、自分のものだけだから。
[次のページ]
戻る   Point(3)