読書について/深水遊脚
紹介するショーペンハウエルの言葉が嫌いなのだ。
「読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない。習字の練習をする生徒が、先生の鉛筆書きの線をペンでたどるようなものである。だから読書の際には、ものを考える苦労はほとんどない。自分で思索する仕事をやめて読書に移る時、ほっとした気持になるのも、そのためである。」(『読書について』ショウペンハウエル著 岩波文庫 P127-128)
いや、嫌いなのはショーペンハウエルではなく、最初の一文のみを大雑把に振り回す人間かもしれない。ショーペンハウエルは、考えることや、感じることを伴わない多読を否
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