読書について/深水遊脚
「知識の借り物競争」という言葉がずっと頭の片隅から離れない。
実体験を重視して読書で得た知識を軽んじる言葉は、一見もっともらしく聞こえる。しかし読書だって実体験の一部であり、読書によって起こる内面の変化は、一人の人間の根っこの部分を形成する。内面の変化のなかには、眠っていた過去の記憶もあるかもしれない。普段は抑えていた不安や悲しみ、あるいは逆に本当はこうしたい、こうありたいという願望もあるかもしれない。迷ったときの道しるべとなるような言葉にも出会えるかもしれない。それらを否定することは、人間が考えること、感じることを否定することにもつながる。
そんな考えを持っているので、下に紹介
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