なにもかも叩き壊された場所/ホロウ・シカエルボク
陽の当らない路地裏の側溝を流れるよどんだ水が、区域の変るところの段差で病人のように流れてゆくのを見ていたのは夕方、肉体と精神が遮断されて、明るくなる朝と暗くなるだけの夜を見つめているだけの俺、日増しに強くなる梅雨の予感と湿気…うろうろと同じ場所を歩いているだけで数時間が抜け落ちたみたいに消える、携帯電話をスライドさせてディスプレイを表示させる、そこに記されていた時間は到底納得出来る類の数字じゃなかった―それがなんだというんだ?―近頃は野良猫が朝から晩までサカりまくって、あちこちで揉めてる鳴声や突っ込んでる鳴声が鉄骨木造の並ぶ通りに木霊する、ときには夜明け前にそんな声が聞こえることもある
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