こごみの天ぷら/ただのみきや
思い浮かべていると ウグイスが鳴いた
ふと今
山より人間社会のほうが弱肉強食なのだと思う
満ちたりた一瞬はいい顔で琥珀に閉じ込められ
水たまりに佇む瑠璃色のシジミチョウはお辞儀をし
あの手この手をすり抜ける 森を愛撫する風に
重い日常を浮かべれば ウグイスが笑った
鬱蒼をかき分け川岸に腰を下ろす
靴を脱いで裾をめくるとせせらぎと共にどこからか
からからと糸車のような音が聞こえてきて
すぐそばで誰かが覗いているような気がした
鬱蒼であるわたしはその誰かに見せたかった
冷たい水に脚を浸して向こう岸へ渡る姿を
川の中からひともぎひともぎヒドラの首を狩るように
こご
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