The End Of An Ear/木立 悟
斜めの鏡に映る逢魔
草が双葉へ渡す花
解体される建物が
料理のように匂いはじめる
小さく鳴る水藻
かわいては沈み
ふたたび浮かび
壁と影を繰りかえし濡らす
喉にそそがれる喉
想いも泡もわずかに潤い
真昼の窓に消えるほどの
広さ 明るさ 空しさ
何処にも行けない市民が
紙を被せられた刃物を見ていた
おだやかな光の下の
かたちを見ていた
夜から昼へ
硫黄をころがし
そこに無いものばかりを書きとめながら
指は見えなくなってゆく
よりみちに奏でられ
冬は冬に近づいてゆく
中洲を結ぶ
光だけの光
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