時計の中のこびとたち/佐々宝砂
 
れてゲームがはじまり、おまけに彼のチームの短針と長針は、脇目もふらずに敵に突進するのである。彼は必死になってしまった。だが、こんなに楽しい思いをしたのは実に久しぶりだった。怪我をして観客席にまわっている彼らの秒針も、手を叩いて喜んでいる。
 やがて笛が鳴り、ゲームは終わった。残っているのは、彼のチームだけだった。

「今年も優勝はポインセチアの目覚まし時計です! 皆さん盛大な拍手を! 優勝者には豪華な賞品が贈られます」
 賞品をもらうのは秒針の役に決まっているというので、彼は壇上に進み出た。手渡された賞品は、持っているだけでふらふらしてしまうほどに大きな調理済みのターキーだった。彼は
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