時計の中のこびとたち/佐々宝砂
 
彼はよたよたしながら壇上から下りた。
「さあ、ゲームは終わった。あんたには帰ってもらう」
 短針が言った。
「え? パーティーはこれからじゃないの?」
「パーティーは確かにこれからだ。だけどわたしら時計の集まりに人間が出るのはほんとは正しいことじゃあない。だから帰ってもらう。そのターキーは記念にやるよ」
「そ、そんな」
 しかし反論をしている暇はなかった。彼はまた、あの見えない手にひょいとすくわれてピュンと矢のように飛んだ。彼は知らなかったが、時計のこびとたちは誰にも較べられないくらい勤勉で、誰にも較べられないくらい気が早いのである。そうでなければあのように毎日コチコチと動
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