時計の中のこびとたち/佐々宝砂
 
矢の如しというじゃないか。わたしらは<時>だ。矢のように飛ぶ。さあ、行こう」
 彼の身体は、何か見えないものにすくいとられたように、ヒュッと浮かび上がった。彼は加速を感じて目を閉じた。これはジェットコースターよりおっかないが面白いぞと彼は思った。だが、それはあっという間に終わってしまった。

 ふと気がつくと、彼は、ゼンマイやネジや歯車で飾られた大広間に立っていた。広間の真ん中には、大きなクリスマス・ツリーがある。しかし、ツリーを飾っているのは星ではなく、きらきら光る金の時計なのだった。彼がぼんやりとあたりの豪華さに感心していると、こびとにしてはずいぶん背の高い白ヒゲの老人が話しかけてき
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