時計の中のこびとたち/佐々宝砂
 
り動き回らなくちゃならない。わたしら毎年一等賞をとってたのにこれでは今年はうまくない」
「そりゃ代われるもんなら代わってもいいけど、おれ、こびとじゃないよ」
「大丈夫」
 何が大丈夫なんだと訊ねる間もなく、彼の身体はみるみるちいさくなった。背の高いこびとよりもちいさくなり、ずんぐりむっくりのこびとより細くなり、いちばん痩せたこびとと同じくらいの大きさになってしまった。
「さあ、時間がない」
 ずんぐりむっくりのこびと(こいつは短針に間違いないと彼は思った)が、彼をせきたてた。
「でも、どうやって、どこへ」
 彼は短針に訊ねた。
「飛んでゆくのさ、矢のように。光陰矢の
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