吉本隆明『芸術言語論』概説/石川敬大
 
の原理で、地に墜ちてしまった価値観の再構築を図り、世界を認識しようとしたそのことに驚かされる。経済学の原理や認識と、「それまでやってきた(略)おのれの文学的素養とを(略)直結・連結させようとした」と言うが、究極的には外部に対し経済学の原理をアイテムとして、既存のバリュー(価値)に戦いを挑むことであり、翻って文学青年であった自らの心の闇、正体、無意識、文学性や芸術性の価値を、生きる価値を測ろうとしたのだと思う。具体的に言うならば、カール・マルクスや『資本論』から学んだアイテムである、「あらゆるものごとを起源に遡って考えぬき、緻密な論理を組み立てるという方法論」と、「抽象的であり、同時に原理的である論
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