吉本隆明『芸術言語論』概説/石川敬大
 
る論理の発展」という思考原則で、傾倒し到達した古典の普遍的な価値と「時間の不可思議さに対する驚異の念」「永遠とは何であるのか」(『伊勢物語論』より)を融合させ、そして結実したのが一九五二年に私家版として発行した詩集『固有時との対話』であった。

 吉本は、他人とコミュニケーションを交わすために言語はあるのだという考え方を第一に否定し、言語は二つに分けることができるとした。それが
・自己表出(表現)…心の動きが自然に表れた言葉
・指示表出(表現)…対象を指示し、情報を伝達するコミュニケーションの
 機能をはたす
自己表出を言語の「幹」や「根」となるもの、本質は沈黙、言語にならない沈黙こそ
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