枝まめ/はるな
 
中にいちばんに手をあげられる勇気とか、きれいなエメラルドグリーンをつくれる絵の具の配分とか、ラムネのびんのビー玉をじょうずに取り出せる技とか。
たぶん自分がすごく恵まれていて、だから、満たされていなきゃ間違いなのだと、すごくおもっていた。欲しがらないことは難しくなかった。だけどだからといって満たされているわけじゃないことは、まだ自分でもわからなかった。
幼い日の欲求に、いまだに閉じ込められている。
もういらないと言うまで抱きしめて頬ずりして頭をなでていい子だねと褒めて欲しかった。一度でもいいからそういうふうにしてほしかった。腕を切って睡眠薬をたくさんのんで胃のなかを無理やり洗われる前にそうし
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