枝まめ/はるな
うしてほしかった。一度でも。
だんだん大人になって自分で手に入れられるものが増えていって、そのことがうれしかった。自分のからだを使うことがうれしかった。抱きしめてほしかった、けど言えなかった。だから抱きしめることにした。そういうふうに解決するしかなかった。でもそれはぜんぜん解決じゃなかった。
お金とか、若さとか、楽しさとか、美しさとか、気持ちよさとか、とにかく派手に看板を掲げれば、ある程度のひとびとは、やって来た。そして、どこかへ行ってしまった。やって来て、どこかへ行ってしまう。それで当然だとおもっていた。プラスマイナスゼロなんだろうな、とおもっていた。なにもかも放り出してしまいたいな
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