大洪水/葉leaf
 
れる。感情は十年前に考案されたままで、特許されることもなく、偽りに偽りを重ねてただ薄青く明滅することは忘れなかった。
 きらめく振動が体内をめぐると、ドイツの空から、イギリスの帆船から、ペルーの平原から、知識の電波を介して、小さな欲望、ケーキのたぐいのもの、その鋭利な反復が消滅する。昼、収穫された桃を農協へと運ぶ作業を手伝う。軽トラックが形を失いながら、光を遮ることで、力だけを距離の間隙に注ぎ込み、虐げられた夏のしもべたちが集荷場で戦う。十四番目のトラックから二十一番目のトラックまでが、母のにおいの散乱の中で、空気の化学変化に追従していき、二十三番目のトラックが、桃の年齢をなすりつけ、樹木の枯れ
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