大洪水/葉leaf
 
枯れていく覚悟を、感覚の瀬戸際に働かせていった。道路では速度から速度へと信号機が跳びはね、落下の直前の空虚により、アスファルトは色素と立体の比べ合いで勝利していた。
 敗北する能力に欠けたまま、ふくらんだ金属の兆しの中で、電線は床を這い、壁を伝い、その電線の囲む空間へと、本体は滑っていきながら死角があふれてくるのに飲まれていった。夕方、机の前に座りながら自分が死んでいくのを感じていた。三十になるということは、若さや青春を失うことではなく生命を失うことだ。細胞は画素に分解され、意識は摩擦を失い、記憶は種明かしされていく。パンダのぬいぐるみや事務用のバッグの体臭へと虚無を投擲すると、大きな撹拌棒が返され、人生の廃墟も世界の屋根裏も価値の建物もすべてが混ぜ返され、その無数のグラフの頂上に、一つの優しい全体が書き記されていた:「どこまでも 戦場」

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