閉まるドアと開くドア/ホロウ・シカエルボク
 

派手なジャージの若者が舌打ちしながら下りてくる
運転手さん、これ見てもらえますか
ほぁい
ねえ、だいぶオーバーしてるね、20キロか
ほぁい
見事に緩急の取れた会話
下手なヒップホップより良く出来てる


そこから十分歩いたところで
車同士のちょっとした接触事故を目撃した
両方の車からサラリーマンと思しき中年の男が
あーあという顔をしながら下りてきて
視線を合わせて苦笑いをした
ごめんなさいね少し考えごとをしていて
いえいえぼくもちょっとぼんやりしてました
名刺が交わされ
保険会社だの警察だのに連絡が取られ
むしろ事故等起こ
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