誰にも決められることじゃない/ホロウ・シカエルボク
 
がみついて生きてきたんだ
ここがなくなることは自分がなくなるのと同じことだと言う
そんなことはないだろ、とおれは異議を唱える
「まだまだ選択肢はあったはずだ、家族のためにもあんたはなにかしら選ぶべきじゃなかったのか?」
家族、とかれはぼそぼそと言った
「ここが駄目になる半年くらい前のことだよ、おれはまとまった休みを貰って久しぶりに家に帰ったんだ、おれがここで苦労して苦労して建てた平屋さ、妻と子供はおれのことを、望まれない幽霊を見るような目つきで見た、無理もないさ、仕事をこなすことに必死で、盆も正月も家に帰れなかった、おれとあの家の繋がりはもう、月々の生活費ぐらいだったのさ、仕方
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