誰にも決められることじゃない/ホロウ・シカエルボク
 
うな日記がこまごまと書いてある
仕事の話や与太話
里に残してきた家族の名前なんか
最後のページには悲しみばかりが記されてある
まるでこれを書いたものがここから下りることが出来なかったみたいに
長い年月を耐えた壁が風に軋む
おれはいちばん高い窓に目をやる
もとの色が判らない位
油にまみれた作業服を着た男がこちらを見下ろしている
かれはゆっくりとこちらに降りてくる
勝手に読むな、と言う
おれは詫びる
まさかまだ作者がいるなんて思わなかったと
かれは僻み笑う
「いるに決まってるだろ」
いなくなることなんて出来るわけがない
自分はここにしがみ
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