誰にも決められることじゃない/ホロウ・シカエルボク
 
何かを選ぶことも出来ただろう、だけど俺はどうしてもそういう気になれなかった、言っただろう、おれはなにかを考えることが凄く下手なんだ、もうこの仕事を覚えたときみたいになにかを懸命に頭に叩き込むことなんて出来ないと思った、それにおれはここが好きだった、仕事をしている時は楽しかった、おれたちが若いころにさ、家族は運命共同体だっていう言葉があったんだ、どこでそれを聞いたのかもう忘れたんだけど、ラジオか何かかもしれない、とにかくその言葉が一番しっくりきた、おれは玉かけなんかに使うワイヤーを使ってさ、あの窓、さっきおれがいた窓だよ、あの窓の上の鉄骨で首を吊って死んだ…もうどれぐらい前のことなんだろうか、20年
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