誰にも決められることじゃない/ホロウ・シカエルボク
0年、もしかすると30年は過ぎたのかもしれない、おれはここに命をささげた、それからここはずっとこのままさ、時が止まってるんだ」
かれはそう言ってぐるりと自分が命をささげた建物を見渡した
窓から差し込む太陽にはもう色がつき始めていた
日が暮れるよ、とかれは言った
「悪かったな、長話してしまって」
おれは黙って首を横に振った
かれはにっこり笑ってふわりと窓に戻り、ひらひらと手を振って見せた
おれも同じように振りかえしてそこを出た
出口のところであの水溜りが目にとまった、ああそうか
あの水溜りの赤は…
山を下りるときに一度だけ振り向くと、赤く錆びたその建物は
まるでおだやかな墓標のようにおれには見えたんだ
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