おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
 
、胸糞悪い生徒のことでも信頼できない人の前では愚痴を慎むほど、勤務態度には気をつけるのだ。可能な限り。まして正社員であり営業担当である彼がそんなことをしたらアウトは免れない。きっと失職する。情けない人だ。わたしも呆れるだろう。捨てたかもしれない。そこまでいかなくても確実に悲しい思いを彼はするだろう。ただ、ひとつ推測できるのは、このページがなにかしらこのときの彼の決意ないし努力目標をまとめたものだということだ。そのような視点から最終行を読むといささかの疑問が生じてしまうけれど。
 もう弥生を殴ったりはしない。
 殴りこそすれ、殴られた記憶はない。優しく扱われることしきりであった 。わたしのほうが
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