おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
　
くなったら、いつでも帰ってきてね」
　と言ってくれた。そして意見の対立から夫婦でケンカを始めた。つらくなったら、か、と思う。大丈夫、わたしはとても強くなった。卒論もA+だったし、卒業式でもめいっぱい笑うことができた。妹は、
「彼ができたら写メ送ってね」
　と言っていた。
　発車する。家族の姿が後ろへと流れていく。雨だ。水滴が窓へと斜めに線を作る。東京駅では健と美加が待っているはずだ。東京の大学へ通っていたこのふたりとは、就活のとき、ある企業のグループディスカッションでいっしょになり、仲よしになった。以来、就職活動のこころがまえや業種ごとの面接の傾向、都会での住居の決めかた、暮らしかたのアド
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